令和6年能登半島地震の人流解析
はじめに
令和6年1月1日に発生した能登半島地震は、震度7の大地震と津波により、建物の倒壊や交通インフラに壊滅的な被害をもたらしました。この災害により、多くの住民が避難を余儀なくされ、地域社会全体に甚大な影響を及ぼしました。
このレポートではリアルタイム人流可視化分析ツール「Kompreno®(コンプレノ)」を活用して、能登半島における避難所などへの人の集まり具合や、指定外避難所、道路の通行実績データ、孤立地域などの分析事例をご紹介します。
- 発災時における初動対応での活用
能登半島地震が発生した翌日の2024年1月2日には、リアルタイム人流可視化分析ツール「Kompreno®(コンプレノ)」を活用し、能登半島の避難所などへの人の集まり具合や、指定外避難所、道路の通行実績データ、孤立地域などを分析を行いました。
「災害に強い街づくり連携協定」を締結している日赤救護研(日本赤十字看護大学附属災害救護研究所)と連携し、分析結果は日本赤十字社へ提供、またTMAT(特定非営利活動法人:徳洲会医療救援隊)へも提供し、初動部隊の現地入りルートの検討、被災自治体の災害対策本部における孤立地域や自主避難場所の現状把握や情報共有に加えて、各避難所の訪問の優先順位付けなどの具体的な救援活動に活用されました。
地震発災後の2024年1月1日16時10分〜1月1日24時までの避難所の稼働状況を分析(図1)をしました。多くの避難所に人が集まっている様子がリアルタイムで把握できることがわかります。
図1:輪島市内の避難エリアの解析
指定外避難エリアの検知分析を行いました。輪島市の検知事例として、曽々木観光センターや、近くのペンションに人が集まっている様子がわかります(図2)。このような指定外避難エリアを40箇所以上特定しました。
図2:輪島市内の指定外避難エリア
地震発災後の2024年1月1日16時~1月2日0時までの人流データによる通行実績データ分析(図3)をしました。
アプリから取得される位置情報データの活用により、車両通行だけでなく、徒歩通行も反映し、初動部隊の現地入りのルート選定、通行不能な区間の特定等に活用されました。
図3:輪島市内を中心とする通行実績の解析
地震当日の2024年1月1日と前日2023年12月31日の能登半島の人流可視化動画を公開しました。
地震発災後、人の動きが滞る様子がわかります。
通行実績データを元に、孤立集落を特定した分析(図4)をしました。
徒歩・車両の通行実績データから、孤立集落を特定することで、被災自治体の災害対策本部での現状把握、現地にいる初動部隊の訪問先の選定や優先順位付けに活用されました。
図4:能登半島全域の孤立集落の解析
年末年始ということもあり、普段よりも帰省や観光などにより来訪者が多く滞在していることが見てわかります。本分析結果により、避難所や支援物資の容量検討にも活用されました。
図5:各市内での居住者、来訪者の解析
- 事後分析の活用
発災直後の珠洲市でのリアルタイム人流可視化避難行動を分析しました。
実際に、津波浸水想定エリアにいた方が、指定されている高台の飯田高等学校のグラウンドへ徒歩で避難する様子が確認できます。地震発生後に、大きな津波が観測された珠洲市エリアにて、どういう避難行動が見られたのかを分析することで、今後の防災計画にも活用することができます。
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