根室市の避難訓練における人流の可視化による
避難行動の分析実証結果
- 概要
令和4年 地震・津波 総合防災訓練(内閣府・北海道根室市)の実施時に、Agoopが事前に配布したスマホアプリ「アルコイン」から収集した人流データを用いて、避難状況に関する迅速な情報収集・共有支援技術を実証(実証内容に関するプレスリリース)
・実証日時:2022年11月5日(土)午前9時00分~
・実証場所:北海道根室市
- 実証結果
本実証におきまして、避難訓練参加者の避難ルートの可視化および津波シミュレーションデータとの統合分析に成功し、避難訓練におけるリスク分析を行うことができました。避難行動分析の一例を動画にて公開しております。
本避難経路の場合(写真1)、津波浸水エリアを通るルートとなっており、冬季や夜間など避難行動が遅れた場合には危険が伴う避難であることがわかります。
本分析結果から、人流データを活用した避難行動分析の避難訓練における有用性が実証されました。
- 背景
東日本大震災や熊本地震など、過去の災害では指定外避難所への避難に関する多くの問題が浮き彫りになりました。また、2024年1月に発生した能登半島地震では、被災した人々や地域が孤立するという深刻な事態が発生しました。災害時に孤立した地域や指定外避難所についての情報を、初期段階で行政や救援機関が収集・共有することの難しさは、共通の課題として指摘されています。この問題は、2020年7月に発生した熊本豪雨でも同様に報告されており、2021年12月に内閣府が公表した日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の被害想定では、地震や津波によって多くの避難者が孤立する可能性が示されました。特に冬季の災害では、孤立した避難者の情報の迅速な収集と救援活動への早急な情報伝達が、低体温症などの健康被害を未然に防ぐ上で極めて重要です。
Agoopは、2018年から内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「官民データ連携による応急対応促進」において、防災科研の委託事業として「災害時における人の流れの把握や避難誘導等の効率化のニーズに基づく研究開発」を実施しました。
一方、熊本赤十字病院とAgoopは、災害時における人流データの利活用について検討を進めてきました。令和2年7月豪雨の災害時には、熊本赤十字病院による救援活動の意思決定にAgoopが提供した人流データが活用されました。(写真2)
これらの経験を踏まえ、Agoopと日本赤十字看護大学附属災害救護研究所は、平常時に交通や観光、保健医療等の分野において人流データを活用することで、災害時には迅速に人流の異常を検知し、救援活動を支援することで、自然災害による社会課題の解決に貢献するという認識で一致し、共同で本実証を行いました。
- 内容
地震による津波災害を想定した避難訓練実施時に、指定緊急避難場所、指定避難所、介護施設およびそれら以外の地域への避難状況を、あらかじめ避難訓練実施地域の住民へ配布するスマホアプリ「アルコイン」を通して、位置情報の収集について同意を得たユーザーから収集した人流データを用いて分析し、災害対策本部に設置されたモニターに投影して分析します。
災害対策本部には2台のモニターを設置し、2種類の可視化(写真3)を行いました
・リアルタイムモニタリング(写真3 左)
リアルタイムモニタリングとは、位置情報の収集について同意を得たユーザーから収集した人流データを地図画面上に表示し、どの方向へ、どれくらいの速さで移動しているかを確認できる仕組みです。
・異常検知モニタリング(写真3 右)
異常検知とは、内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「官民データ連携による応急対応促進」において、防災科研の委託事業として「災害時における人の流れの把握や避難誘導等の効率化のニーズに基づく研究開発」で開発した成果である、人流のリアルタイム異常検知技術です。避難場所の迅速な特定に関する検証を行います。
- 実証当日の様子
- まとめ -災害に強いまちづくりに向けて
本実証実験では、避難訓練における人流の可視化が、避難行動の理解と改善に有用であることが分かりました。この実証実験結果を活かし、Agoopでは引き続き、災害に強いまちづくりを積極的に推進してまいります。