ソフトバンク株式会社の子会社で、位置情報を活用したビッグデータ事業を手がける株式会社Agoop(アグープ、本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 兼 CEO:柴山 和久、以下「Agoop」)は、日本赤十字看護大学附属災害救護研究所(以下「日赤救護研」)と共同で避難訓練実施時に人流データを用いた避難状況に関する情報収集を行い、災害時の孤立地域に対する支援の改善を目的に、2022年11月5日(土)に北海道根室市で内閣府が実施する地震・津波防災訓練において、人流データを用いた津波避難状況の把握に関する実証実験(以下「本実証実験」)を行います。本実証実験では、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「官民データ連携による応急対応促進」において、国立研究開法人防災科学技術研究所(以下「防災科研」)の委託事業として、「災害時における人の流れの把握や避難誘導等の効率化のニーズに基づく研究開発」で研究開発した技術を活用します。
【概要】
・避難訓練実施地域の住民へスマートフォン(スマホ)アプリを配布し、避難訓練参加者の人流データを収集することで、避難場所の迅速な特定および避難行動・交通状況などを把握する実証実験を実施します。
・本実証実験では、官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「官民データ連携による応急対応促進」において、防災科研の委託事業として「災害時における人の流れの把握や避難誘導等の効率化のニーズに基づく研究開発」で研究開発したAI(人工知能)技術を活用します。
・平常時に交通や観光、保健医療などの分野において人流データを活用することで、災害時には迅速に人流の異常を検知し、救援活動を支援する仕組みの構築を進めます。
・ 内容
避難訓練実施時に、Agoopが事前に配布するスマホアプリから収集した人流データおよびAI技術を用いた避難状況に関する迅速な情報収集・共有支援技術の実証を行います。また、平時からデータ収集を行うことで、平常時は公的機関において交通や観光、保険医療へ活用しつつ、災害時には迅速に人流の異常を検知し、救援活動の支援を実施するための、実践的な利活用モデルの構築を検討することで、災害時の孤立地域に対する支援の改善を行うことを目的とします。
・背景
過去、日本では、新潟県中越地震や東日本大震災などの地震災害時に、被災者や被災集落が孤立する事態が発生してきました。また、東日本大震災や平成28年熊本地震では、指定外避難所での避難に関する課題も報告されています。災害時の孤立地域や指定外避難所に関する共通課題は、発災初期に行政、救援機関がこれらの避難先に関する情報の収集・共有が困難であるという点です。これらの課題は地震災害だけでなく、2020年7月に熊本県南部を中心として発生した豪雨災害でも報告されています。そして、2021年12月に内閣府が公開した「千島海溝・日本海溝沿い巨大地震の被害想定」においても、地震自体による電力インフラなどの被害に加え、津波により広範囲な地域における多くの避難者の孤立が予想されています。特に、この災害が厳冬期で発生した場合、低体温症による健康被害を予防する上でも、孤立避難者に関する情報を迅速に収集し、救援活動の意思決定に反映させることが重要です。
Agoopは、2018年から内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「官民データ連携による応急対応促進」において、防災科研の委託事業として「災害時における人の流れの把握や避難誘導等の効率化のニーズに基づく研究開発」を実施しています。
一方、熊本赤十字病院とAgoopは、災害時における人流データの利活用について検討を進めてきました。令和2年7月豪雨の災害時には、熊本赤十字病院による救援活動の意思決定にAgoopが提供した人流データが活用されました。(写真1)
これらの経験を踏まえ、Agoopと日赤救護研は、平常時に交通や観光、保健医療等の分野において人流データを活用することで、災害時には迅速に人流の異常を検知し、救援活動を支援することで、自然災害による社会課題の解決に貢献するという認識で一致しました。
・本実証実験の概要
地震による津波災害を想定した避難訓練実施時に、指定緊急避難場所、指定避難所、介護施設およびそれら以外の地域への避難状況を、あらかじめ避難訓練実施地域の住民へ配布するスマホアプリ「アルコイン」(写真2)を通して、位置情報の収集について同意を得たユーザーから収集した人流データを用いて分析し、災害対策本部に設置されたモニターに投影して分析します。
具体的には、下記の三つの観点で分析します。
①人流のリアルタイム異常検知技術による避難場所の迅速特定
内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「官民データ連携による応急対応促進」において、防災科研の委託事業として「災害時における人の流れの把握や避難誘導等の効率化のニーズに基づく研究開発」で開発した成果である、人流のリアルタイム異常検知技術(写真3、4)を活用し、避難場所の迅速な特定に関する検証を行います。
②人流データによる避難行動(交通)の事後分析
避難訓練開催時の参加者の人流データ(写真5)と津波発生時の想定津波浸水エリア(写真6)を重ねて分析することで、避難行動(避難経路や避難時間など)を分析し、実災害発生時に向けた防災シミュレーションに活用します。
③平常時からの人流データの蓄積・解析による災害時の市民や小型船舶の避難支援
本実証実験で収集する人流データは、避難訓練時の分析活用のみにとどまらず、平時からデータ収集を行うことで、例えばイベント開催時の人流・交通分析(写真7)や、発災時の小型船舶の迅速な位置把握(写真8)、避難支援などが可能になります。
・取得データとその活用
・平時(事前防災)における人流データの活用
本実証実験を北海道根室市主催の避難訓練と連携させて実施することで、避難訓練参加者の避難行動を分析し、避難計画策定時に役立てます。また、住民に配布するスマホアプリ「アルコイン」は歩数計アプリで、平時は健康促進のために利用していただきながら、データ収集を行うことで交通や観光、健康医療などの分野の分析に活用します。
・発災時における人流データの活用
発災時にスマホアプリから収集された人流データを活用して、指定緊急避難場所、指定避難所、介護施設およびそれら以外の地域への避難状況を迅速に把握し、迅速な救援活動の実現に寄与します。
・今後の展開
内閣府の官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)の「官民データ連携による応急対応促進」において、防災科研の委託事業として「災害時における人の流れの把握や避難誘導等の効率化のニーズに基づく研究開発」での人流データの研究成果を活用することで、これまで困難であった、発災初期の迅速な避難先に関する情報の収集・共有に貢献し、救援活動の迅速な意思決定を可能にするべく取り組みます。これからもAgoopと日赤救護研は、それぞれの知見と技術を持ち寄り、人流データの利活用による多様な社会問題の解決に取り組んでいきます。
※本実証実験で使用する人流データは、事前にスマートフォンアプリからの位置情報収集について同意を得たユーザーから取得するものです。
■Agoopについて
Agoop(アグープ)は、位置情報ビッグデータを活用する先進的企業であり、スマホアプリから大量の位置情報・センサー情報を集積して独自の技術で解析することで人の動きを見える化し、「流動人口データ」などのビジネスに新しい視点をもたらす価値ある情報を提供しています。
Agoopの「流動人口データ」は、同意を得たユーザーのスマホアプリから収集される位置情報データを、秘匿加工を行った上で提供しているもので、これまでにさまざまな企業や自治体の支援を行っています。高精度かつ鮮度の高い情報を分析・活用することで、日々変化する人の動きを把握することが可能となり、街づくりや観光振興、災害対策、商圏分析などにおいて、正しい意思決定を迅速に行うことができます。
■日本赤十字看護大学附属災害救護研究所について
日赤の救護活動を中心とする諸活動で得た知見を広く社会に発信・還元するとともに、災害救護に関する研究・教育活動を通じて、わが国の救護の質・量の向上と活動領域の拡大に寄与することで、被災者の苦痛の予防・軽減に寄与することを目的に、2021年6月に日本赤十字看護大学の付属の研究所として設立されました。世界有数の災害多発国である日本での先進的な活動、日赤の国内外での支援活動実績等を集積し、研究・開発を発信し、さらに次世代育成のための活動ベースキャンプ、協働プラットフォームとして、発展的に活動を推進しています。
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